
物流コストとは?内訳や推移・高騰に対応する削減方法まで完全解説
物流コストの削減は多くの製造業・小売業・EC事業者が取り組み、頭を悩ませている業務の一つです。「売上げに対する物流コストの比率が高い」「輸配送費は年々上がる一方…」どう改善したらよいかわからず、改善が進まないケースもあるでしょう。
今回は、まず物流コストの内訳などの基本を解説したうえで、改善への取り組み・実例を紹介します。物流における課題解決の参考にしてください。
目次
物流コストとは
物流コストとは、消費者が購入した商品が手元に届くまでの物流業務全般にかかるコストを指します。物流コストというと配送コストがイメージしやすいですが、それ以外にも様々な費用が物流コストとして計上されます。
分類別物流コスト
物流コストには大きく分けて3つの分類の方法があります。
- 支払い形態別コスト…外注・社内に分類「支払物流費」「自家物流費」
- 物流機能別コスト…機能別に分類「輸送費」「保管費」「包装費」「荷役費」「物流管理費」
- 物流プロセス別コスト…製造から販売までのプロセスに分類「調達物流費」「販売物流費」「社内物流費」
誰がどの視点で物流を見るか、切り口によって分類の仕方が異なります。
物流コストを見直すには、現状の把握が必須です。まず支払い形態別コストで「支払物流費」つまり外注費を実績から把握し、「自家物流費」を推定で算出しましょう。算出の際は「物流機能別コスト」が項目として役立ちます。
物流コスト削減を考慮しなければならない理由|物流コストは高騰傾向
「利益を生まないコストセンター」と比喩された時代もある物流。見方を変えれば、売上げに対する物流コストの比率を下げれば利益の向上に直結するため、損失を生まないよう取り組みを進める必要があります。しかし物流コストは年々高騰。背景にあるのは、労働力不足や情勢の変化による輸送費の値上げです。
SDGsの観点や業界の動向から値上げ要請に応じる企業がほとんどであり、買い叩きに頼る物流コストの削減は時代錯誤ともいえます。そのため、物流コストにおける根本からの見直しが重要となってきました。
物流コスト削減の原則は「ムリ、ムダ、ムラ」を減らすことであり、業務効率化にもつながります。物流業務において、業務効率化と利益の向上、コスト削減は直結するのです。
機能別物流コストの内訳|現状把握
物流コストの削減を考える際にポイントとなるのが、何をするためにいくらかかったのか把握することです。ここでは「機能別物流コスト」に着目し、それぞれの内訳を紹介します。発生している実際の費用を当てはめて、物流コストを「見える化」しましょう。
輸送費
輸送費は商品を運ぶときにかかる費用です。
自社便を保有している場合には減価償却費、修理・整備費、燃料費、高速料、駐車料金を計上します。外部委託時の支払物流費としては、工場から物流センターなど長距離を移動しながら大量に商品を運ぶときのチャーター輸送費、消費者へ商品を届けるときの宅配便、緊急便などの配送費が含まれます。場合によっては船や飛行機も使用されるでしょう。燃料費が関わるため、時勢の影響も受けます。
物流コストの中でもっとも高い割合を占めていて、見直しをきっかけに大きな効果が出やすい項目です。
保管費
倉庫などに商品や資材を保管するにあたり、必要になる費用です。自社倉庫を使用する場合には、倉庫の減価償却費(リース料)、維持費などが保管費に当たります。
外部委託時の支払物流費としては、次の2種類に分かれます。
- 倉庫のスペースをレンタルするのみの場合「賃借料」
- 保管から商品管理を任せる寄託契約を結ぶ場合「保管料」
保管料について、よく使用される計算方法は、以下の3種類です。
- 個建て保管料……商品数と保管日数をもとに算出
- 容積建て保管料……サイズと保管日数をもとに算出
- 坪貸し保管料……使用するスペースの広さと坪単価をもとに算出
包装費
包装費とはケース・段ボールなど包装に関わる費用を指します。ラベルやシール、包装機器に関わる費用も包装費に含みます。
荷役費
荷役費とは入荷・出荷に伴うピッキングや仕分け作業および付帯作業にかかる費用です。作業に必要なマテリアルハンドリング機器やロボットに関わる維持費・リース費なども含みます。
外部委託時の支払物流費としては以下の項目が該当します。
- 入庫費……1ケースあたりの入庫費用と入庫数をもとに算出
- 出庫費……算出方法は入庫費と同様。ピッキング料とも呼ばれる
- 流通加工費……タグやシール付、ラッピングなど
輸出の場合はその他の諸経費がかかる場合もあります。
物流管理費
物流管理費とは、バックオフィスに関わる費用です。物流システムや受発注システムを扱う人件費や、それらのシステム開発・保守に関わる情報システムの人件費、倉庫現場へ入出庫指示を出したり、荷札や送り状の準備をするスタッフの人件費などです。
人件費の計算は、社内スタッフの何人が何時間程度、物流業務を担当しているのかという点を計算が必要で、簡単にはいきません。しかし、コスト削減のためにはできるだけ詳細な数字を求めるのが良いでしょう。 物流コストの中でも大きな割合を占める項目です。
物流コスト比率から見る推移と競合他社比較
物流コストを「見える化」した次に捉えたいのは、競合他社と比較して適正な価格であるかどうかです。公益社団法人 日本ロジスティクスシステム協会(JILS)では毎年荷主企業に対して「物流コスト調査」を行っています。現状は適正な価格なのか、削減の余地があるとすればどの項目なのか、確認してみましょう。
売上高物流コスト比率
引用元:「2021年度物流コスト調査報告書」の資料をもとに作成
売上高物流コスト比率は、トータル物流コストを売上高で割ったものです。売上高に対して、物流コストが占める割合を示します。
「2021年度物流コスト調査報告書」によると、全業種で見た売上高物流コスト比率は、2021年度において前年比0.32%上昇。2020年度も0.47%上昇しており、過去20年間の調査の中で最も数値が高い5.7%を推移する結果になったと発表しています。
自社における現状の売上高物流コスト比率を算出し、該当する業種の数値と比較してみてください。
物流コストの物流機能別構成比
引用元:「2021年度物流コスト調査報告書」の資料をもとに作成
物流コストの物流機能別構成比からわかるのは、物流費の中で輸送費の占める割合の高さです。全業種における輸送費の占める割合は54.3%と半分以上を占め、保管費が17%、その他が28.7%となっています。
各構成比に売上高をかけて計算し、同業種が費やしているおおよその費用感を掴んでみましょう。
課題に対する物流コスト削減方法
次に物流コストを削減するにあたり、課題となる点と解決方法を紹介します。
保管費削減にはルール化と在庫管理システム
適切な在庫管理ができていないために、物流コストの保管費が高くついていないか確認しましょう。以下のような例が挙げられます。
- 欠品を恐れ、大量の在庫量を抱えている
- 倉庫内整理ができていないため、ピックアップに時間がかかったり、保管スペースが広がりすぎたりしている
- 倉庫内で適切に管理できていないため商品が劣化し、販売できない
物流コストに悩む企業で上記のような点が思い当たる場合、適切な在庫管理方法を知り、実行することで課題を解決できる可能性があります。課題解決のためには以下のような方法があります。
- 物流業務のルールやフローを見直し、徹底する
- 在庫管理システムを導入する
参考:在庫管理とは?そのメリットやよくある課題の解決法をご紹介。
ルールやフローを見直すことで無駄が省かれ、守ることで効率的に仕事を進められます。特にベテランスタッフが専任で倉庫業務をになっている場合、ルール化されていない業務があり、新人スタッフでは対応しにくいです。慣習などもルール化し、誰でも同じように業務をおこなえるよう工夫します。
在庫管理の基本、「先入れ先出し」についてこちらの記事でフローも詳しく解説しています。
先入れ先出しとは?在庫管理におけるメリット・デメリットを徹底解説!
「欠品」についてはこちらの記事も参考にご覧ください。
また、欠品しないように大量の在庫を抱えている場合は、在庫管理システムの導入が効果的です。リアルタイムの在庫数を確認したり、データから需要を予測したりすることで、適正在庫を維持するための対策を講じることができます。
在庫管理の方法・在庫管理システムについてはこちらの記事をご覧ください。
在庫管理とは〜WMS(在庫管理システム)を導入するメリット〜
適正在庫・安全在庫についてもこちらの記事で解説しています。
安全在庫とは?安全係数や欠品許容率を含めた計算方法までご紹介
人件費削減には物流管理システムの導入とアウトソーシング
人件費は改善の余地が大きい項目の1つです。以下のような課題が考えられます。
- 人為的ミスが多く、ダブルチェックやミスの対応のための人件費がかかっている
- 閑散期と繁忙期の物流量の差が大きく、繁忙期に合わせた数のスタッフを雇用している
これらの課題に対応するためには、以下のような方法が考えられます。
- 在庫管理システムや機器を導入する
- 物流業務をアウトソージングする
人為的ミスへの対応するには、ミスが出ている業務を機械化・自動化することで改善可能です。例としては、在庫管理システムやハンディターミナルなどの導入があげられます。
また繁忙期の必要人数に合わせ、常に多くのスタッフを雇用していれば、不要な人件費がかかり続けています。一方で必要なときだけアルバイトを雇っている場合も、採用や教育にコストがかかるでしょう。物流をアウトソーシングし、従量課金制の変動費にすることで、固定費であった人件費を削減できる可能性があります。もちろん物流のプロが業務を行うことにより、ミスの削減および物流品質の向上も可能です。
アウトソージングによって社内業務に余裕ができれば商品開発や販促企画などに力を入れることができ、より収益アップが見込めるという副次的効果も生まれます。
ロジクラはお客様の条件にあう物流の委託先を無料で紹介しています。お気軽にご相談ください。
輸送費・管理費の削減には拠点の集約・分散
荷量を多く抱える企業では、次のような課題を感じている場合もあります。
- 拠点が多く、管理費や維持費がかかる
- 拠点は一箇所で、小口配送費が高くリードタイムも長い
- 輸送コストの占める割合が高い
倉庫内の荷量を考え、どの拠点も余裕がある状況なら、拠点の集約によるコスト削減も考えられます。拠点を集約すると保管費や管理費だけでなく、輸送費が削減できる可能性もあります。物流拠点間の輸送費に無駄がある場合です。
一方全国への小口出荷が多いケースでは、拠点を集約すると消費者までの配送距離が長くなり運賃が上昇するため、拠点を分散した方がいい場合もあります。集約すべきか、分散すべきか慎重に検討しましょう。
物流コスト削減におけるアイデアの事例をご紹介!
次に実際に物流コストの削減に成功した企業の施策例・アイデアを紹介します。具体的に取り入れられる方法を検討してみましょう。
事例1:RFIDの活用拠点集約【オンワード樫山】
2018年オンワード樫山はRFIDタグの活用と物流拠点の集約で、在庫管理・棚卸しにかかる時間の短縮に成功しました。11拠点から4拠点に集約するに際して、各支店で管理していた在庫も物流拠点管理に変更。これにより実店舗の倉庫業務の時間短縮が実現しました。
また物流拠点においては、離れた場所から在庫情報を一括で読み取り可能な「RFIDタグ」と「RFIDタグ読み取りゲート」を導入しました。入出庫および棚卸し時間の短縮、さらに人員の削減が可能になり、コストダウンが進みました。
もっと手軽で身近なバーコードでも効率化が可能です。以下の記事で解説しています。
事例2:自動倉庫の導入と在庫管理システムを利用したABC分析【ベルーナ】
通販事業のベルーナは自動倉庫の導入と在庫管理システムの活用で、人件費を含めた物流コストを年間で6.2億円改善したといいます。
自動倉庫は、「歩かせない」「考えさせない」「判断させない」を意識し、設計。作業員の即戦力化と人員の削減を図りました。
さらに在庫管理システムのデータを活用し、ABC分析により商品のランク付け。出荷の多い商品は棚の下段3段までを使用、上段には出荷の少ない商品を配置しました。
その結果、物流コスト削減のみならず、リードタイムの短縮も実現した事例です。
事例3:外部倉庫へのアウトソーシング【NOSE SHOP株式会社】
フレグランスのセレクトショップ「NOSE SHOP」は、外部倉庫へのアウトソーシングを進め物流コスト30%減に成功しました。
属人化とヒューマンエラーの課題を、倉庫業務のプロに一任し、出荷や在庫の管理のミスが0に。結果としてカスタマーサポートやシステム調整の工数を削減できました。また同時に、委託倉庫が導入している在庫管理システムが受発注システムと連携できたことにより、通販の注文管理〜出荷指示までの工数削減も実現。総合的なコストカットが叶った一例です。
詳しくはこちらの記事もご覧ください。
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物流コストの現状把握と改善を進めよう!
物流コストとは物流業務全般にかかるコストで、運送費や人件費が大きな割合を占めています。これらのコストを削減するためには、適切な在庫管理と人件費を減らす工夫、拠点の集約・分散がポイントです。
また、物流コストを削減する方法は「ムリ、ムダ、ムラ」を見直すため、業務効率化にも効果があります。ただ、社内で物流コスト削減や業務効率化に取り組んでも、達成されないケースも多くあります。その場合は物流のアウトソージングを検討してみてはどうでしょうか。
フルフィルメントサービスのXTORMは、ロジクラと佐川グローバルロジスティクスとが共同で提供しています。在庫管理ソフトで適切に在庫管理をしながら、EC注文を24時間365日自動出荷可能です。
受注管理システムと連携しているため入力ミスなどがなく、最先端ロボットによるスピーディな出荷業務をおこなえます。料金は従量課金制で初期費用がかからない点は、物流コスト削減で大きなメリットです。
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物流代行によって、出荷ミスなどをなくしながら、より効率的に在庫管理・発送などの作業を行い、コストを削減を進めましょう。

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