
現場が語る、通販の在庫管理における3つの鉄則
ロジクラの武末です。
最近では通販からはじめて小売を経験する方も多くなり、モノを仕入れて売ることのハードルがどんどん下がっていっていると感じます。
通販をはじめるまでは全く気にしていなかったが、いざ商品が入荷して注文が入り、出荷を経験すると、在庫管理をどうやって行っていくかを気にし始める事業者も非常に多いと思います。そこで今回は、私自身がゼロから月間数千件の出荷を実現するまでに学んできた「通販の在庫管理における3つの鉄則」をお伝えしたいと思います。
1. 通販の在庫管理は「入荷が全て」
まずはじめに声を大にしてお伝えしたいのが、通販での在庫管理における問題の多くは「入荷」に起因するということです。
注文数が増えて仮に出荷件数が増えたとしても、入荷さえしっかりしておけば、多少の波動(注文の増減に波があること)には耐えられます。一方で、入荷でミスが発生していると、商品の誤出荷等によって、1つのミスが二重三重の課題を生み出します。
入荷時に発生する課題の多くが、以下に分類されると思います。
- 商品の入れ違い(テレコ)
- 商品の入荷差異
- 商品の入荷遅延
上記の問題は、前提として在庫管理システムを用いることで問題を可視化すれば対策が打ちやすいという側面はあります。その上で、個別に問題に対する対策を打つ必要があります。こちらは非常に細かくなるため、以下の記事にて解説しますので、こちらを御覧ください。
2. 商品特性に応じたロケーション管理をする
入荷の改善を進めつつ取り組みたいのが、出荷する商品の特性に応じたロケーション管理方法の選択です。
ロケーション管理には、大きく「固定ロケーション」と「フリーロケーション」があります。
「固定ロケーション」とは、商品毎に保管する場所を決めるロケーション管理方法です。どこに何があるのか人が覚えやすく、単品通販のようにSKUが少ない場合に適していますが、場所が空いていても他の商品を置くことができません。シンプルな運用ですが、柔軟性に欠け、面倒な点も多い運用です。入出庫作業は単純になるのでシステム化されていない現場で多く採用されています。
「フリーロケーション」とは、空いている場所に商品を保管していくロケーション管理方法です。出庫すべき商品はどのロケーションにあるのか確認するのが手間ですが、1つのロケーションに置ききれなくても、商品の入れ替えがあっても何もする必要はありません。したがって、保管効率が上がるので、同じ倉庫でもより多くの在庫を保管することができます。また、通販モールのようにSKUが多い場合には、同じロケーションに異なる商品を保管していくため、商品の取り違いをなくすといった効果もあります。
SKUが多く注文数が多い通販の場合は、フリーロケーションを取り入れる場合が多いかと思いますが、化粧品や薬品のようにSKUが多くともパッケージ等が似通うっている場合には、ドラッグストアのようにどこに何があるのか分かった方がミスが少なくなるため、固定ロケーションも取り入れいている場合もあり、自社の商品特性に合わせてロケーション管理方法を選択する必要があると思います。
また、どちらのロケーション管理を行うにしても、定期的な棚卸しやロケーション変更によって、在庫数を正確に検数することをおすすめします。定期的な検数が在庫差異の早期発見と問題の解決につながり、結果的に大きな問題になることにつながるからです。
3. 出荷特性に応じたピッキング方法を選択する
ロケーションを改善した後は、ピッキング方法を出荷特性に合わせて選択します。
ピッキング方法には、大きく「オーダーピッキング(シングルピッキング)」と「トータルピッキング」があります。
「オーダーピッキング(シングルピッキング)」とは、注文ごとに保管場所から商品を取りだす方法のことです。多くの企業はここからスタートします。そしてSKUの数や注文あたりセット数にもよりますが、出荷件数 / 月が数千件クラスまではこの方法で問題なく、出荷を行うことができると思います。一方で、出荷件数 / 月に関わらず、セールのように一時的に出荷が偏る(波動が大きい)場合には「トータルピッキング」を選択した方が良いという場面もあります。
「トータルピッキング」とは、複数の注文の商品をまとめて取りだした上で、仕分け場にて注文別に仕分けする方法のことをです。例えば、12件の注文の商品を一気にピッキングするため、ピッキング自体の時間は大幅に削減することができます。一方で、毎日必ず複数の注文が入ることを前提としないと効率が落ちてしまったり、オーダー間での商品取り違い(テレコ)が発生する可能性もあるため、注意が必要です。また、在庫管理システムのようにトータルピッキング用のピッキングリストが出力できなければ実現が難しいため、そういった意味でもオペレーションとシステムを設計した上で、取り入れる必要があります。
入荷から出荷までの中で、徐々に方法論が複雑化していっていると感じた方もいるかと思いますが、通販での在庫管理は基本は入荷が全てです。その上で、いかに出荷件数の波動や取り扱い商品の特性に応じた在庫管理方法やピッキング方法を選択するか、こういった考え方をして頂ければと思います。