
なぜ!?過剰在庫が発生するのか。3つの原因と防止策
在庫管理は経営における重要な業務である反面、難しい業務の1つです。多様化する顧客のニーズに答えるために、取り扱う商品を増やしていく中で過剰在庫に頭を悩ませている企業も少なくないのが現状です。販売機会ロスを防ぐために欠品を防ぐことも大事ですが、同時に大量の在庫を抱えてしまい、管理が行き届かなくなるケースも多くあります。過剰在庫は倉庫や店舗のスペースを取るだけでなく、結果会社の資金繰りの悪化にもつながり、経営の首を絞めかねません。
今回は、過剰在庫によるデメリットと発生原因、防止策などについて説明していきます。
目次
放っておかないで!過剰在庫のデメリット
在庫も資産の1つ
在庫は企業の資金(お金)を物に変えた形で、売れることによって初めて利益となります。一般的に在庫を持つことで、販売機会ロスを減らし、納期を短くすることが出来ます。商品に傷があるなどトラブルが発生した時も、在庫に余裕があればすぐに商品を交換することができ、クレーム対応もスムーズに出来ます。販売者からしたら、在庫は足りないよりは多い方がいいと感じるかもしれません。
しかし、適正量を超えた多すぎる在庫は、企業の経営を圧迫します。利益を得るために資金(お金)を使って、資産(在庫)を手に入れたという形ですが、その商品が売れなければ利益が出ません。売れ残った商品は値下げや廃棄で対応することになるので、資金の元本が回収できず赤字となり、収益の悪化を招くのです。
長期保存における品質低下
売れ残った商品を過剰在庫として抱えるということは、その商品を長期保存することになります。在庫は時間経過により、品質が低下し、商品価値が下がります。
また、単に古くなるだけでなく、新しい型が登場し、時代遅れの商品となってしまうことも多々あります。劣化したもの、流行が過ぎたものは正規の値段で売ることは難しく、値引か廃棄という手段を取ることになります。流行が過ぎたものは値下げしても売れなかったり、またブランド価値を守るために値下げできないケースなどもあり、その場合その在庫はそのままロスとなってしまうのです。
管理費用の増大
過剰在庫を抱えることで以下のような管理費用を増大させることにつながります。
・保管場所(倉庫)の賃借料、光熱費
・運搬(商品移動)にかかる輸送費、人件費
・廃棄のための輸送費、処分費用
・作業スペース圧迫による効率悪化、人件費
過剰在庫は、維持や管理に貴重な資金をたくさん使うことになるだけでなく、廃棄処分で無駄な作業を生み出し人事ロスを発生させます。管理費用の増大は、企業の資産を減らしてしまうことになるのです。在庫は企業の資産を形に変えたものであり、それが物でなく現金(資金)の状態であれば、会社が自由に使えるお金が増えたということです。新商品の開発や新しいサービスの立ち上げ、投資や運用など、ビジネスを加速するために使えたはずの自由なお金が過剰在庫に取られてしまっているという状況は、会社にとって大きな問題です。
過剰在庫を防ぐことは会社の経営にとって非常に大事な課題なのです。
過剰在庫が起きる4つの原因
過剰在庫が起きる原因はさまざまですが、発生原因を知ることによって対策を取ることができます。今回は過剰在庫が起きる主な4つの原因について説明します。
在庫管理責任者の不在
過剰在庫が発生している現場では、在庫管理責任者が誰なのか明確でないということがよくあります。在庫管理責任者は、それぞれの在庫数量を正確に把握し、必要数量を的確に判断する重要な役割を担っており非常に難しい仕事です。在庫拠点が複数ある場合、各拠点でのデータを統括する人がいなければならないのです。この商品はどれくらいの量売れるのか、今どこにどれだけの数量あって、その在庫をどこに回すのが適切か、正確に在庫量を把握するためのシステムが必要となります。情報を把握することにより、出荷実績と在庫数量の傾向から生産・仕入の増減などを適切に判断、指示していくことができます。各部門で正しい情報を共有できれば、商品開発の方向性や重点的な営業先の見極めなど、状況に応じて柔軟な対応を行うことができるのです。
在庫の把握、分析ができていない
そもそも、過剰在庫が発生していることに企業が気づいていないケースがあります。欠品を防ぐために分析もせずに安易に発注をして在庫を抱えてしまうケースも過剰在庫を生む原因となります。現状の在庫数の把握、そしてこれからの売れ行きの分析をしっかり行うことで過剰在庫は防げます。言うのは簡単ですが、これがとても難しい。
売れ筋商品だけを取り扱うことができればいいのですが、顧客のニーズが多様化している今、多品種を少量生産する時代に突入しています。在庫を整理して、一つ一つの商品において優先度・重要度に対し厳しい視点を持つことで、顧客満足度を下げずに経営リスクを抑えることができます。
また、生産・仕入れなどのバランスの改善などは、他部門で指摘しづらいためにそのままにされるケースも多く見られます。企業全体で必要なデータを共有し、在庫を見直す意識を広めていくことが重要です。
販売者都合の仕入れは要注意
販売者都合の仕入れは過剰在庫を発生させやすいです。皆、自社倉庫にある在庫は在庫として把握していると思いますが、小売店や販売会社に出荷した商品もまだ売れていない潜在的な在庫になります。出荷先の在庫は、売れなかった場合は自社に戻ってくるものなので、自社で新たに生産・仕入れをする時は、出荷先の動向まで把握・分析しておくことが必要です。
一般的にバイヤー(販売者)は、ブームになっている商品は、売れどきだと思って在庫を大量に仕入れておこうという心理が働きます。販売者都合による仕入れは、商品の販売価値が見えにくくなり、過剰在庫のリスクが潜んでいるため注意が必要です。
返品商品は再販率が下がる
できる限り避けたいですが、返品が多いことも過剰在庫が起きる原因となります。返品商品は、傷や汚れがつき、不良在庫になることが多く、販売できる状態に戻すにはコストがかかります。見た目には綺麗な状態でも新品としての価値がなくなり、値下げを行うことになります。
また、返品のタイミングによって販売時期を逃してしまうこともよくあります。返品商品は過剰在庫になるリスクが高いため、そうならないよう出荷前検品を徹底するなど返品を減らす工夫をすることも大事です。
過剰在庫を防ぐ!3つの防止策
在庫管理責任者を明確に
過剰在庫を防ぐためには、在庫管理責任者を明確に決めることが重要です。在庫管理責任者は、全体の在庫状況を正確に把握し、売れ行きの分析を行います。
そして、販売担当や仕入れ担当などに情報を共有し、在庫量を調整する立場です。企業の在庫状況を正確に理解して、各部門と連携を取ることで、売れるものは在庫をちゃんと持ち、売れ残りそうなものはあらかじめ少なく仕入れするなど、適切な在庫量を調整することが大事です。優秀な在庫管理責任者をしっかりと立てることが、過剰在庫を防ぎ、利益を増やすことにつながります。
過剰在庫の可視化
倉庫内を整理整頓し、各商品の保管場所を明確に決めておくことも過剰在庫を減らすためには重要です。倉庫内が煩雑でどこに何があるか分からないような状況だと、本当は商品があるのに無駄に発注・仕入れしてしまうなどのミスも起こりやすくなり、過剰在庫の発生につながります。在庫の位置と量を誰が見ても分かるように可視化しておくことが大事です。商品数が多い場合や在庫の拠点が各地にあるような企業だと、目で管理するには限界があります。
そんな時は、1つ1つの商品情報と拠点、保管場所、数量を明確に管理する在庫管理システムを導入するのも効果的です。発注から納品までに必要な時間を納品リードタイムといいますが、適正な在庫量は納品リードタイムを参考にして考えます。受注生産であれば在庫を抱えないで済みますが、生産に時間がかかり、納期が短いものは販売機会ロスを防ぐために見込み生産が時には必要になってきます。
そのため、その商品の納品リードタイムを考えながら在庫量を決めることになるのですが、見込み生産を極力控えて、受注生産に切り替えることが、在庫量を減らすには有効です。
在庫情報の共有化
在庫を可視化しても、需要を正確に分析しないと過剰在庫を防ぐことはできません。販売実績や既存在庫数量といった商品に関する情報を小売店だけでなく、販売会社、メーカー、仕入れ先まで可能な限り共有することが大切です。小売店は、販売実績ではなく顧客が買いに来た時に在庫がないと困るという不安から仕入れ数量を少し多めに決めることもあります。不安から判断した数字を元に販売会社やメーカーが生産や仕入れを判断するのは非常にリスクが大きく、利益が不安定になる原因になります。情報を正しく共有することで過剰な生産や仕入れを防ぎ、過剰在庫のリスクを減らすことができます。流行の商品など、需要の変動が大きい商品は各企業間で伝達方法や手段を決めてルールを決めて情報共有しましょう。一方通行でなく、双方にとってメリットが生まれる仕組みづくりを進めることが重要です。
過去の実績や世の中の傾向を見て、需要予測の精度を徐々に高めていくことが適切な在庫量の維持につながります。
在庫管理システムの導入で課題解決
どこにどの商品がどれだけあるか、またその商品がどれくらいの期間で売れそうか、最低どれくらいの在庫を持っておいた方がいいのか。在庫状況を正確に把握し、管理・分析することが重要なのはよく分かりましたが、これを在庫管理責任者1人が全部把握・指示するのは容易ではなく、リスクが高いです。在庫管理システムを導入することで、在庫情報を即座に各部門に共有でき、需要分析もしやすくなります。
在庫管理・倉庫管理ソフト「ロジクラ」なら、iPhoneやパソコンを使ってどこでも誰でも簡単に在庫情報を把握することが出来ます。また、各商品の在庫表を作ることができ、その商品の在庫数量が発注点を下回った時にアラートを表示して、発注するタイミングを見逃しませんので、不安からくる過剰な発注を防ぐことも出来ます。(発注点・発注量の決め方についてはこちらの記事をご覧ください。)
過剰在庫を防ぐことはビジネスの加速において肝になってきます。できる限りシンプルに誰でも在庫状況を把握できる環境を整えることが、企業の成長には重要だと言えるでしょう。