
在庫管理(通販/店舗/委託倉庫)完全マニュアル | 検討すべき対策とポイント一覧
コロナウイルスの影響もあり、より一層通販や実店舗等での複数販売チャネル(オムニチャネル)を活用するメーカー・小売事業者の方が増えていると思います。
通販をはじめる場合も、まずはshopifyやBASE、stores、カラーミーショップといったカートシステムを活用したり、楽天、Yahoo!ショッピング、amazonといった通販モールを活用して始める方が多いと思います。
こうした方々が軌道に乗る中で直面するのが「在庫管理」です。私自身アパレル通販モールの企業を起業し、これまで複数のアパレルブランドの通販事業立ち上げに関わってきましたが、在庫管理を仕組み化していないことで、せっかく注文が増えているのに、商品数を増やせなかったり出荷遅れによってお客様対応が発生するなど、売上につなげられている方々に多く出会ってきました。
通販の場合、送料等も含めた入出荷対応や在庫管理等の物流費用は売上の10%前後が標準と言われています。事業主の方々には、自社の物流費用をこの枠内に抑え、継続改善を進めていくことが求められるます。
こちらの記事では、各販売チャネルや業種商品における在庫管理を完全マニュアルとして解説させて頂きます。詳細記事も記載していきますので、ぜひ皆さんの困りごとの解決策になればと思います。
在庫管理とは?
メーカー・小売事業者の方にとって、在庫管理は日常業務の一つだと思いますが、その一般的な流れやよくある課題、押さえどころを認識している方は少ないと思います。特に、実店舗や卸売に加えて通販を始める場合、在庫管理の基礎/基本を認識しておかないと、欠品の頻発や人員の増加や教育にとって大きなコストがかかってしまいます。では在庫管理の基礎/基本とは何か?その点から解説したいと思います。
在庫管理の基礎/基本
入荷/商品管理/出荷の一般的な流れ
まず、在庫管理は一般に
- 入荷(商品を仕入れる)
- 商品管理(商品を在庫する)
- 出荷(商品を販売する)
の3パートに分かれます。また、在庫管理と聞くと②商品管理をイメージする方が多いと思いますが、実は通販等の複数販売チャネルを展開する方にとっては、最も重要なポイントは圧倒的に①入荷です。
複数販売チャネルの特徴は「出荷先が非常に多くなること」です。実店舗や卸売の場合は、限られた特定の場所に出荷していた方が、通販を始めた瞬間に非常に多くの方々の自宅に出荷する必要が生まれます。つまり、入荷でのちょっとしたミスが出荷によって一気に拡大してしまうという特徴があるのです。したがって、入荷をいかに正確にするか、これが在庫管理における最重要課題となります。
通販/店舗/卸の在庫管理の違い
各チャネルによって、在庫管理も異なりますが、具体的にどういった違いがあるのか解説したいと思います。
通販の在庫管理
まず通販の場合は、単一チャネルか複数チャネルかによって大きな違いがあります。例えば、shopifyやBASE等のカートシステムによって自社公式サイトのみ、あるいは楽天等のモールにのみに展開している場合を単一チャネル、一方カートとモールの両方に展開している場合を複数チャネルと言います。
単一チャネルの場合は、「入荷した在庫をいかにカートやモールに自動で反映するか?」「カートやモールの受注を配送会社連携も含め出荷に自動で反映するか?」の2点が主な課題になります。在庫管理システム(WMS)を利用することで、上記の作業を劇的に減らすことができると思いますが、単一チャネルの場合は在庫管理は比較的ラクなのではないかと思います。
複数チャネルの場合は、単一チャネルの課題に加えて、「入荷した在庫を各チャネルにどう振り分けるか?」「各チャネルの注文をどのように一括で管理し出荷するか?」が主な課題になります。ここで大活躍するのか在庫管理システム(WMS)に加えて、ネクストエンジン等に代表される受注管理システム(OMS)です。OMSは連携しているカートやモールに限ってですが、各チャネルの在庫や受注を一括で管理することができるシステムで、複数チャネルを展開する場合には、OMSかWMSのどちらかの導入が必須だと考えられます。
店舗の在庫管理
店舗での在庫管理とは、「自社が運営している実店舗にて販売している商品の在庫管理」のことをここでは指します。
店舗では「月に1回の棚卸しをどう簡略化するか?」や「委託販売の商品管理をどう行うか?」が主に課題になります。こうした課題には、エアレジ等のようなPOSレジの在庫管理機能を活用することで解決が可能です。前者については、店舗が営業終了した後に店舗スタッフの方々が行っている場合も多く、実はシステム導入をした方が費用対効果が良いという部分もあるかと思います。また、後者の場合、少量の在庫差異は許容されますが、百貨店等の大手小売を除き、基本的委託商品の在庫差異が大きい場合、取引先間のトラブルの元になるため、POSレジの在庫管理機能や、クラウドPOSレジとWMSを連携させておくと、在庫差異の原因を確認することもでき、トラブルを防ぐことができると思います。
卸の在庫管理
卸の在庫管理とは、「他者が運営している店舗にて販売している商品の在庫管理」のことをここでは指します。いはゆる、自社商品を各小売店に卸しているというパターンです。
この場合「各店舗にどのくらいの点数を卸すか?」と「委託している預け在庫をいかに管理するか?」が課題になります。正直通販や店舗での在庫管理に比べて、卸の在庫管理は出荷先も限られるため、作業としては楽なように思われがちです。しかし、販売主体が自社でない以上、各小売店に在庫を的確に振り分け、回収するための在庫管理が求められます。
店舗によって販売力が異なる中で、なんとなく小売側との関係性や依頼によって卸す商品や点数を決めがちですが、販売力のある良い取引条件の小売にいかに在庫を提供するかが非常に重要になります。また、そのためにも各商品がどの小売にてどのくらい売れているのかを可視化する必要があります。ここで重要になるのが在庫管理システム(WMS)になります。卸売に特化した受注管理システムで手頃なものは未だ少ないため、WMSであれば、各店舗のどのくらいの点数を過去に卸しているのかや、委託商品のうちどのくらいが返却済みなのかも把握することができるものもあります。
在庫管理の方法
さてチャネルごとに異なる在庫管理ですが、管理方法も事業規模によって選ぶことができます。在庫管理の方法を事業規模に合わせて変更していくことは、事業成長に直結するため、慎重に進めたいですが、日々の在庫管理を整理しておかないと、他者倉庫への委託ができなかったり、委託できても思った通りの管理ができず大炎上、、等ということも少なくありません。ここでは、自社と委託での在庫管理の違いと、それぞれの押さえどころを解説したいと思います。
自社管理
小売店舗を運営していて、卸や通販も行っている方は自社管理が多いと思います。いわゆる「店舗や事務所のバックヤードを倉庫代わりにしている」パターンです。
この場合に重要なのは、どの商品がいくつあるのかをリアルタイムに把握できるようにしておくことです。リアルタイムが難しい場合は、まずは日次で把握できるようにする必要があると思います。なぜならば、販売経路が増えると在庫がズレる可能性は非常に高まり、ズレた在庫を修正するために、最悪の場合当該商品の販売を一旦停止する必要が出てくるからです。
私も経験がありますが、店舗と通販や卸で大きく異なることは、店舗は実際にある在庫を販売するのに対して、通販や卸は帳簿上にある在庫を販売する点です。これによって、注文後に在庫数がズレていた場合、お客様の注文はキャンセルする必要が生まれ、お客様対応の負荷が非常に大きくなってしまいます。一方で、商品を複数の取引先に販売している場合、商品を間違った枚数送ってしまったり、別の商品を間違って送ってしまうことも日常茶飯事です。ミスをすることは仕方ないので、いかにミスにすぐに気づける状況を作るか、これが重要になってきます。
複数の販売経路にてB2BとB2Cの入出荷を行っている場合、ミスを少なくし、ミスに気づきやすくするためには、エクセルや手書き帳簿では限界があります。総数管理をする場合やSKUの数が少ない単品販売の場合は、上記でも管理可能かもしれませんが、SKUが多い複数商品販売の場合は、在庫管理システム(WMS)の導入が必要不可欠です。一度の在庫ズレで出荷ミスが発生した場合、お客様対応などによって、通常の出荷の約10倍の時間と労力を費やすと言われています。特にミスは出荷が多く繁忙期に偏るため、繁忙期の在庫ズレは販売機会の損失を生み出すだけでなく、大切なお客様からの信頼を失う機会となってしまう可能性もあります。
委託管理
通販がメインの販売経路の小売事業者の方は、通販在庫と店舗在庫を分け、前者を外部倉庫(3PL)に管理を委託している場合も少なくありません。しかし、販売経路によって在庫を分けることで、売り逃しが発生するなど機会損失が大きいのも事実です。以前にオムニチャネルがよく取り上げられたいたのはこうした問題意識を在庫を一元管理することで解決しようという狙いがありました。
委託管理の場合、在庫管理や入出荷業務を外部に委託するので、商品特性や販売形態等に合わせて最適な外部倉庫を選ぶ必要があります。委託倉庫(3PL)を選ぶ際のポイントは大きく分けて以下の3つとなります。
- 通販などの販売形態への対応経験があるか?
- 委託する商品の管理経験があるか?
- 送料も含めたコストが明確で割高でないか?
多くの場合、在庫管理をコストセンターだと捉え、3を最優先に考え、1や2を甘く見がちですが、1や2をしっかりと把握していないと、想定外の問題で作業停止になってしまう可能性もあります。例えば、多くの委託倉庫(3PL)はB2Bの出荷には慣れていますが、B2Cの出荷には慣れていません。通販の場合、時間帯指定や同梱等購入商品や人それぞれに個別対応が必要なため、それに適した人員やオペレーションを揃えていないといけません。また、商品も食品とアパレル、アパレルでも洋服と雑貨によって、在庫管理におけるポイントは異なるため、自社の商品特性にあった倉庫を選ぶ必要があります。