【2020年版】通販での倉庫(3PL)選び完全マニュアル

こんにちは、ロジクラの武末です。

ネット通販をはじめてある程度注文が増えてきた時に倉庫の移転などを検討する人も多いのではないでしょうか。

一般に委託倉庫(3PL)はB2Bの事業者間での対応を行ってきた会社が多く、ネット通販のB2Cの一般消費者向けの対応を行ってきた会社は意外に少ないです。

今回は通販モールでの物流担当経験のある筆者が、これまで自身が倉庫移転にて経験してきた成功と失敗を踏まえ、失敗しない倉庫(3PL)選びのポイントを解説したいと思います。

倉庫(3PL)選びの流れ

倉庫選びの基本的な流れは「要件決定→見積もり依頼→選定」という流れですが、ポイントを踏まえると細かくは以下のような形になります。

  1. 準備1:倉庫に求めることを整理する
  2. 準備2:現在の「1出荷あたりの物流費」を把握する
  3. 紹介サービスを活用して倉庫を探す
  4. 倉庫に見積もり依頼をする
  5. 倉庫と詳細を詰める
  6. 最終決定のため倉庫見学をする
  7. 倉庫を決めて契約する

各ポイントで重要になる部分を押さえないと、倉庫をうまく見つけられないだけでなく、移転後のトラブルになりかねないので、詳細を見ていきましょう。

準備1:倉庫に求めることを整理する

倉庫の移転を考える時は、「物流費を下げたい」「もっと対応力があるところにしたい」等などいくつかになるかと思いますが、倉庫側に荷主である自分たちが何を重視しているのかを正確に伝える必要があります。

そのために以下の観点で、自分たちが倉庫に求める要件を整理することをおすすめします。

  1. 物流費を下げたい
  2. 現場の対応品質を上げたい
  3. 物量増加に対応できるようにしたい
  4. ギフトやオリジナル梱包等の物流サービスに対応してほしい
  5. お客様対応代行など物流以外のサービスに対応してほしい

その上で、各項目に優先順位をつけていきましょう。もちろん現在の状況次第では、物流費が安くなりかつ対応品質も上がるということはありますが、相見積もりをとっていくと、必ず最後は「何で決めるか?」が重要になります。見積もり前の段階で厳密に決める必要はないですが、社内で一度話しておくのが良いと思います。

準備2:現在の「1出荷あたりの物流費」を把握する

求めることを決めたら、見積もりを依頼する際に求める物流費の水準を決める必要があります。その際に、見積もりを貰う前に必ず「現時点での1出荷あたりの物流費」を計算しておきしょう

色々な理由で倉庫を探されると思いますが、物流費を下げる前提で探す場合は、現在の物流費がそもそもどのくらいの水準なのかを把握する必要があると思います。万が一非常に安い水準であれば、倉庫探しは相当難しいと思いますし、相手と交渉する際にも現在の物流費をお伝えする必要があります。

ここで「1出荷あたり」としているのは、倉庫の見積もりは千差万別で分かりにくいという問題があり、それを解消するために統一的な指標として出しております。具体的な計算方法は以下になります。

  1. 自社で倉庫業務を行っている場合
    ・(月間の人件費+保管面積分の家賃+月間送料) ÷ 月間出荷件数
  2. 委託先で倉庫業務を行っている場合
    ・月間の倉庫からの請求金額 ÷ 月間出荷件数

アパレルなどのようにシーズンや繁忙期にとって物流費が変動する場合は、それぞれの平均を計算してみましょう。少し大変かと思いますが、これをぱっと答えられるかどうかで、倉庫側の態度が一気に変わりますので、頑張って計算してみることをおすすめします。

紹介サービスを活用して倉庫を探す

倉庫を探すといっても、あてがない人も多いと思います。仮に知人から倉庫を紹介されても、その会社が通販経験がなければ依頼することは難しいというのが実情かと思います。

そういった方のために、倉庫の紹介サービスを行っているサイトがあります。

1. ECのミカタの倉庫紹介サービス

http://ec-butsuryusoukonavi.com/

通販関連メディアで有名なECのミカタが運営している倉庫紹介サービス。様々なECのミカタが様々な倉庫と提携しており、倉庫を無料で紹介してくれるというサービスです。

2. ロジクラの物流削減コンサル / 倉庫紹介サービス

https://logikura.jp/3pl/

我々が厳選した全国にあるロジクラ提携倉庫の中から、「もっと送料が安いところが良い」「対応力のあるところが良い」等の多様なニーズに合った倉庫をご紹介しており、倉庫移転の際にシステム移行が不要なのでとてもおすすめです(自画自賛ですみません、、)

倉庫に見積もり依頼をする

いよいよ倉庫に見積もり依頼をしますが、倉庫側もお客様の情報がなければ見積もりを出すこともできません。そこで以下のポイントをまとめた「見積もり依頼書」を作成し共有しましょう。

自社情報

  1. 取扱商品
  2. 取扱商品数(SKU数)
  3. 月間入荷数
  4. 月間出荷数
  5. 保管坪数 / 保管在庫数
  6. 1出荷あたり物流費
  7. 倉庫移転の理由(=倉庫に求めること)
  8. その他(必須対応サービス(撮影/ギフト対応/採寸 等など))

上記は倉庫側から聞かれる可能性が高い(むしろ聞かない倉庫は対応が不十分な可能性がある)ので、依頼書にまとめられなくとも出せるようにしておいたほうが良いと思います。

また、こちらが確認したい情報として以下を伝えることで、単純な見積もりだけでなく、的確な提案をもらうことができると思います。

開示依頼情報

  1. 倉庫所在地
  2. 倉庫面積 / 人員数
  3. 当社取扱商品での実績
  4. その他設備

補足提出情報

加えて、今後の交渉を踏まえると直近半年/1年間での出荷件数の増加見込みもお伝えしましょう。倉庫は基本的に荷主の出荷件数や在庫数によって売上が決まるため、現時点で小規模でも中長期で拡大見込みがある企業には、見積もりも優遇してくれる可能性があります。後々の交渉を見据えて、そういった情報は積極的に共有するようにしましょう。

倉庫と詳細を詰める

見積もりが出揃って、諸々の比較検討をしたら、有望な候補とは詳細打ち合わせをしていくことになります。倉庫と打ち合わせをしていく際に必ず確認すべきは以下です。

  • 現場担当責任者(SV)
  • 実績の詳細(商品、SKU数、月間出荷件数 等)
  • 利用在庫管理システム
  • 入出荷の依頼から実施までの流れ

営業担当と現場担当との間で意見が食い違うことは非常に多いので、可能であれば現場担当の方に同席頂くか、紹介いただき質問する機会をもらいましょう。

また、利用在庫管理システムや入出荷の依頼から実施までの流れは非常に重要で、こちらを確認していないと確実に契約後に問題が発生します。在庫管理システムがこれまで利用していたものから変更になる場合は、そちらの打ち合わせも必要ですし、入出荷の依頼方法がメールなのか在庫管理システム経由なのかによっても自社の担当者の作業内容が大きく変わると想定されます。在庫管理システムについては別の記事で解説したいと思います。

最終決定のため倉庫見学をする

候補の倉庫を絞り込んだら、最後は必ず倉庫を見学に行きましょう。写真や動画を見ても、現場は必ず違いがあります。また現場を見ることで、実際に自社を担当する人がどういう人でどういったことを気にして作業しているのかを確認することは非常に有意義です。倉庫見学の際に見るべきポイントは以下なので、こちらも合わせて押さえましょう。

  • 類似企業の入出荷の流れと在庫管理状況
  • 5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の状況
  • 担当者の挨拶
  • 倉庫の規模/人員数

5Sと挨拶は実は倉庫にとって非常に重要な要素です。5Sができている倉庫は作業のミスや在庫の紛失等に非常に気を配っています。5Sが行き届かない場合は、倉庫が荒れていて「そこまで手が回っていない」という証拠とも言えます。挨拶に関しては、作業習熟していない新人が多い倉庫は挨拶が少ないという傾向があるように思います。作業習熟が低いと当然ミスが多くなりますし、退職者等が多いという可能性もあり、セール時等の人員増が必要なタイミングで人員を確保できず出荷遅延等の原因となってしまう可能性もあります。

5S改善アイデア事例集【倉庫編】画像で見る業務効率が上がる整頓術

しっかりとした倉庫であれば、このように5Sに気を配り現場の改善を図っているのが一般的なので、百聞は一見に如かずで見学することをおすすめします。

倉庫を決めて契約する

最後に移転決定した倉庫と業務委託契約を締結しますが、契約書も押さえどころを認識していないと、後で取り返しのつかない状況になってしまいます。最低限押さえるべきポイントは以下です。

  • 解約の事前告知期限
  • 損害賠償の範囲と内容
  • 解約時の追加費用の有無

倉庫を選ぶ話をしていますが、事業拡大によって短期間での倉庫移転が必要になることも多々あります。そうした場合に、課題になるのが事前告知期限です。通常解約(=退去)の事前告知は半年前が一般的かと思いますが、短ければ短いほどよいですし、逆に半年以上の場合は変更依頼をしてみた方が良いかと思います。

また、倉庫では日々入出荷作業を行うため、商品の破損や誤出荷等のトラブルが少なくありません。倉庫内での商品の破損は倉庫責任になることが多いかと思いますが、誤出荷の場合の対応を誰がするのか、お客様からの損害賠償を誰が支払うのかは契約書上での取り決めを行っておくべきだと思います。

最後に、解約時に原状回復などの費用を請求されることは稀かと思いますが、移転作業を別途請求される可能性はあるので、注意が必要です。移転が決まった瞬間に対応品質が落ちる倉庫も少なくなく、お互いに気持ちよく付き合うために、移転も想定した取り決めに注意しましょう。

ここまで倉庫の移転についてかなり詳細に解説してきましたが、倉庫移転は私自身非常に労力がかかり、検討が不十分だと後から取り返しのつかない状況になる危険性もあります。当社でも物流費削減コンサル・倉庫移転のサポートを行っておりますので、こちらの記事をみても不安な方はお気軽にご相談ください!