
物流アウトソーシングとは?基本から選び方のポイントまで【物流現場のプロが語る】
EC・通販事業など在庫を持つ事業者が効率化・コストカットを図る際、まず思い浮かべるのが物流のアウトソーシングではないかと思います。現在は大手からベンチャーまで、多数の物流アウトソーシング(3PL)専門の会社が存在し、会社ごとにさまざまなサービスが提供されています。
物流アウトソーシング(3PL)のメリットはたくさんあります。しかし、いざ自社倉庫を使った在庫管理から卒業し、物流のアウトソーシングを始めようとすると、何を基準に物流会社を選べばいいのか、戸惑われる方もいるのではないでしょうか。ここでは、物流アウトソーシング(3PL)の基本から、メリット・デメリット、導入にあたって失敗を防ぐためのポイントをご紹介します。
目次
物流アウトソーシングとは?
まず物流アウトソーシング(3PL)の概要について、確認しましょう。
概要
物流アウトソーシングとは、物流業務の外部委託を指す言葉です。「3PL」とも呼ばれます。物流のノウハウを持つ専門業者に委託することで「コスト削減」「出荷件数の増減への対策」「品質の向上」などが期待できます。
委託できる業務内容
物流と一口にいっても、工程は多岐にわたり、どこまで委託するかは、荷主の判断次第です。
一般的に物流アウトソーシング(3PL)は以下の業務を委託できます。
- 入庫
- 検品
- 流通加工
- 在庫管理
- ピッキング
- 出庫
- 輸配送
- 返品
- 棚卸し
受注業務やコールセンターまで含まれる場合もあります。
自社物流の状況に合わせて荷動きが多い商品だけ委託したり、流通加工の必要な商品だけ委託したり、といった活用の仕方も検討しましょう。
物流アウトソーシングのメリット5つ
次に物流アウトソーシング(3PL)を活用するメリットを、5つ紹介します。導入により恩恵を受けられそうか確認してみましょう。
1.コストカット
物流アウトソーシング(3PL)1つ目のメリットは、コストカットに効果があることです。
まず金額的に大きな部分として、倉庫設備や車両などの購入やリースの費用が削減できます。また繁忙期と閑散期の出荷量に差がある場合、短期スタッフ採用にかかる費用や教育コストにも着目すべきでしょう。自社物流の場合、閑散期にスタッフの手が余ってしまえば、人件費の無駄にもなりかねません。
自社物流における固定費が、物流アウトソーシング(3PL)では出荷量に応じた変動費になるため、コスト削減が可能になります。
2.物流コストの見える化
2つ目のメリットは、物流コストが可視化できることです。
例えば自社物流では可視化しづらい、施設や設備に関する減価償却費は、保管費として計上されます。さまざまな人が関わる人件費に関しても荷役費として計上されるケースが多く、可視化されるでしょう。在庫管理の事務員や作業スタッフ、情報システムに関わる人件費も含まれます。
物流費として見える化でき、管理・改善に役立ちます。
3.リソース不足の解消
3つ目のメリットは、社内リソース不足の解消が挙げられます。
物流はまだまだ人の手を介しての作業が多く、社内の貴重なリソースを逼迫させる一つの要因です。物流アウトソーシングを活用すれば、社内の人材でやるべき業務だけを手元に残せます。
その結果、商品開発やマーケティングといったコア業務に力を入れるリソース確保も可能になるでしょう。
4.品質の向上
物流アウトソーシング(3PL)4つ目のメリットは、物流のプロによる品質の向上が挙げられます。
毎日物流に携わるプロならではのノウハウを用いて、以下のような点からCS向上へのアプローチが可能です。
- 配送や商品に適した梱包
- 正確に反映される在庫管理
- 丁寧な流通加工
効率的かつクオリティーの高い物流業務が遂行されます。
5.事業の成長に対して柔軟に対応
5つ目のメリットは、事業の成長にあわせた対応がしやすい点にあります。
- 出荷量が増加し、保管スペースも増やさなければならない
- 全国区への配送が増え、地方に拠点を持つメリットが大きくなった
事業が大きくなれば、こういった変化に対応しなければなりません。所有している設備の立地やスペースの制約を受けず、相談ひとつで柔軟に調整できるのも、物流アウトソーシングの魅力のひとつです。
物流アウトソーシング(3PL)のデメリット3つ
デメリットもあります。導入を検討する際には、しっかり押さえておきましょう。
1.品質面における認識の相違
物流アウトソーシング(3PL)特有のデメリットとして、品質面における認識のすり合わせがうまく行われないケースが挙げられます。
例えば、生産された工場からの入庫時、既に外装箱に傷やへこみ、汚れが発見されることは珍しくありません。ダメージ品は出荷の可否を決めなければなりませんが、判断が難しい場合があります。荷主と倉庫側の判断に相違があると、後にトラブルになりかねません。
定例会や現場視察などで、品質面の認識にズレがないよう、荷主と倉庫でコミュニケーションを図る必要があります。
2.責任の所在が掴みづらい
トラブルが発生した際、責任の所在が掴みづらいのも物流アウトソーシング(3PL)を導入するデメリットの1つでしょう。
配送業者、作業スタッフなど、委託先のさらに下請け業者も介在するケースがほとんどのためです。ダメージが発生する工程は大きく分けて3つ。工場から倉庫に入庫するまで、倉庫保管時(流通加工作業中も含め)、エンドユーザーまでの納品時に分かれます。
どの工程で、どういった経緯で、なぜ発生してしまったトラブルなのか、追及しなければなりません。
3.物流ノウハウが蓄積しない
自社内に物流ノウハウが蓄積しないのも、デメリットです。
運用フローの共有があったとしても、書類や会議の場だけでは見えてこない部分は多いでしょう。一緒に現場作業をしてみたり、事務方における在庫管理の1日の流れを行ってみたりしなければ、自社ノウハウとしては落とし込めません。
「いずれ規模が大きくなれば、自社物流を」と考える場合には、どこまで委託するのか十分に検討する必要があります。
物流アウトソーシング(3PL)を利用する時の流れは?
では物流アウトソーシング(3PL)を利用するためには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。順に解説します。
自社物流の状況把握
まず既に自社物流が動いている場合には、現場レベルで現状把握を行いましょう。
マニュアルを基に動いているはずの現場であっても、納品先ごとのイレギュラーやトラブルにあたっては臨機応変にスタッフが対応している可能性が高いでしょう。また物流における課題のあぶり出しも重要です。
「何を改善したいのか」委託業者に情報共有すべく、状況把握は必須です。
問合せ
物流アウトソーシング(3PL)の会社をいくつか検索し、問合せしましょう。
会社によって、強みや取り扱い品目が異なります。自社の悩みや商品にあった会社を選定してみてください。
打ち合わせ
問い合わせした委託業者と打ち合わせをしましょう。保管したい物量や出荷1件あたりのボリューム、1日あたり何件程度の出荷が想定されるかなど、現状の自社物流の状況や物流における悩みをここで共有するとよいでしょう。
相見積もり
打ち合わせの要望を基に、提案書と見積書を作成してもらいましょう。なるべく同じ条件で数社、相見積もりをとり、その旨を物流会社に伝えるのが望ましいです。
契約
物流業者の選定ができたら、契約書を交わします。
料金、各種条件、契約期間など細部にわたって確認しましょう。委託先にひな型を作成してもらう場合、不利な条件が含まれていないか注意する必要があります。
委託開始
契約が済んだら、いよいよ委託開始です。
アウトソーシングできたからといって、任せきりにせず、特に軌道に乗り始めるまでは、二人三脚で運用しましょう。すり合わせをするためにも、出だしが重要です。
物流アウトソーシング(3PL)検討において失敗を防ぐポイント【物流現場のプロが語る】

ポイント① :現状の課題・求める条件の整理をする

物流アウトソーシング(3PL)を検討する際、最も重要なのは、サービスに何を求めているか、何を達成したいかという、条件や課題の整理です。ここで最初に気をつけなければならないのは、物流アウトソーシング(3PL)は「物流の丸投げ」ではないという点です。
会社が抱える物流の課題や、物流アウトソーシング(3PL)によって求める結果は、会社ごとに全く異なります。これらの前提条件を整理しないまま全てをアウトソーシング先に任せきりにしてしまうと、「求めていた結果と異なる」といったことから、最悪の場合、「コストが前より高くなってしまった」「業務効率が以前と変わらない」といったケースに至ることさえ考えられます。
したがって、物流アウトソーシング(3PL)を検討する際は、現状の物流コストの把握だけでなく、商材の特徴や業務の整理を行うことから始めてみてください。たとえば、食品・化粧品であれば以下のような項目が考えられます。
- 厳格な品質管理が必要
- 小ロットで多種類のラインナップがある
- 化粧品製造業などの資格が必要
- ギフトラッピング
アパレルであれば「ささげ」と呼ばれる、商品の撮影・採寸・原稿といった作業が含まれていることもあります。自社がどういった商材を扱っており、どういった業務で発注・入荷から発送処理まで行っているのか、いま一度整理してみてください。
また、自社倉庫の管理担当者へのヒアリングを行うことも非常に重要です。ほとんどの場合、各社独自のチェック項目や作業の流れがあります。例えば、急な商品の入庫や発送が必要になった場合にどうやって対応しているか、といった項目は確認しておいたほうがいいでしょう。
これらを把握しないまま物流アウトソーシング(3PL)先を決めてしまうと、思わぬところでオプション料金が発生してコストカットが実現できなかったり、自社で管理できていた項目がアウトソーシングによって管理できなくなってしまったりする可能性があります。商材や業務の整理によって現状の課題を把握し、物流アウトソーシング(3PL)に求める条件をある程度リストアップできたところで、アウトソーシング(3PL)業者の選定を開始してみてください。
ポイント②:物流アウトソーシング(3PL)業者の選定のコツ
インターネットで検索すると、多数の物流アウトソーシング(3PL)業者を見つけることができます。この中から、前項でリストアップした課題・条件を満たす業者を選んでいくことになります。チェックが必要になるのは、主に以下の3項目です。
- 業務の範囲
- 倉庫の立地
- 料金
チェック項目1:業務の範囲
まず「業務の範囲」ですが、ここでは前項でリストアップした課題・条件を満たすかどうかをチェックしていきます。ここで気をつけなければならないのは、「コア業務をアウトソーシングするか」を考えることです。
現在の物流アウトソーシング(3PL)業者は、多岐にわたるサービスを展開しており、かなりの業務を任せることが可能です。しかし、自社でやらなければならない業務(コア業務)については、例えその業務も含めたアウトソーシングが可能であったとしても、委託するかどうかは必ず検討が必要です。
例えば、専門的な知識が必要な商品を扱っている会社がコールセンター業務も含めて物流アウトソーシング(3PL)業者に委託したことで、サービス品質が低下してしまったという話もあるようです。
チェック項目2:倉庫の立地
次に「倉庫の立地」です。当然ながら、遠い場所よりも近い場所に発送するほうが輸送費は安く済みます。そのため、自社の商品がどこに向けて発送されることが多いのかを確認し、なるべくその周辺に倉庫を構える物流アウトソーシング(3PL)業者を探すのがいいでしょう。
チェック項目3:料金
最後に「料金」です。料金面で納得できるかどうかは非常に大切です。一見すると非常に安価な業者でも、自社の毎月の取り扱い件数を確認して見積りを出すと意外に高額になってしまうケースもあります。他社との比較を含め慎重な検討が必要です。
ただし、料金の安さだけを優先し、求める条件が達成できない業者を選んでしまうと元も子もありません。必ず、候補となる物流アウトソーシング(3PL)業者が、上記3項目の条件をどれだけ満たすか、比較検討してみてください。
チェック項目4:迷ったら物流アウトソーシング(3PL)業者を紹介してもらう
だだ、ここまで細かく条件を挙げていくと「自力で探すのは大変だ……」と思われる方もいるかもしれません。そういった場合、他社が利用している物流業者を紹介してもらうことで、希望条件が満たせる業者が見つけられることもあります。
また、現在自社で在庫管理に関するソフトウェアを使っている場合、ソフトを開発している会社の担当に相談するといった方法もあります。利用しているソフトの担当は単に物流の知識も豊富なだけでなく、自社の在庫管理の状況を把握しているという点で、相談するにはうってつけです。「ソフトしか作っていないだろうから、物流アウトソーシングの相談をしても無駄かもしれない……」と考えず、試しに声をかけてみてください。
ポイント③ コスト以外にも目を向ける
物流アウトソーシング(3PL)を検討する大きなきっかけの一つがコストカットです。ただし、料金だけで業者を選定すると、それだけ失敗のリスクも高まります。繰り返しになりますが、重要なのは最初にリストアップした課題や条件を満たしているかどうかをしっかり比較・検討することです。物流には、以下のような様々な機能があります。
- 輸送・配送
- 保管
- 包装
- 荷役
- 流通加工
- 情報処理
これらの各場面において、自社が求める水準を満たす業者かどうか、しっかり見極める必要があります。
また、選定した物流アウトソーシング(3PL)業者に、希望通りの結果を出してもらうために重要なのが、積極的な情報開示です。返品や在庫管理業務、入出荷業務等のイレギュラー業務を含めた様々な情報をアウトソーシング(3PL)業者と共有しましょう。トラブルが回避できるだけでなく、アウトソーシングのスケジュールを遅滞なく完了することにもつながります。
ポイント④ 環境の変化に対応する
物流を取り巻く状況は、常に変化しています。例えば「物流 法改正」といったワードで検索すると、毎年のように新たな法制度が登場していることがわかります。
物流だけでなく、物価上昇に関する法制度や、取り扱い商材に関わる法制度も、自社の物流に大きな影響を与えます。また、高速道路の開通やドローンといった技術の進歩など、交通インフラの開発が物流に新たな選択肢を与える可能性もあります。それだけでなく、自社の商材の変化によって、必要な機能も変わっていくかもしれません。
こうした変化に柔軟に対応していくためには、前述の通り、物流アウトソーシング(3PL)業者と積極的に情報を共有し、その都度運用フローやルールを決めていくことが重要です。
定期的な情報共有で物流アウトソーシング(3PL)業者とのコミュニケーションを積極的に行い、社内外の急な変化にも対応できる連携体制を構築しましょう。
まとめ
物流アウトソーシング(3PL)を始めるにあたって特に重要なポイントは、以下の3点です。
- 自社商品の特性と物流課題に合わせた業者選定
- 現状把握と物流業者への伝達
- 物流会社への積極的な情報開示
コミュニケーションに関しては、契約を進めてからでも遅くはありませんが、一度選定してしまった物流会社を変更するのは大きな手間になります。まずは自社にあった委託先をしっかりと見極めましょう。
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