
ECビジネスにおける倉庫選び・委託倉庫の選び方
通販・EC事業において、事業が成長拡大してくると物流業務を外部委託するといったニーズが出てきます。
事業の立ち上げ時には社内で商品管理を行っていた会社も、事業拡大し月々の出荷件数が増えるにつれ、外部委託を考え始めることでしょう。
物流業務を外部委託するために物流倉庫についての知識を深めておく必要があります。
今回は、物流業務の外部委託を考えるタイミング・委託するメリット・かかる費用の料金体系・倉庫を選ぶポイントについてなど、説明していきますので、自社の倉庫選びのヒントが得られるでしょう。
目次
どれくらいの出庫数から倉庫の委託を考えるべき?
一般的に月々の出荷件数が「300件」を超えたら、物流業務の外部委託を考えるべきでしょう。
月300件を超えていないならば、社内の一部を倉庫にし、発注があれば梱包作業から日本郵便などの業者に任せるといったやり方が一番低コスト且つ効率がいいかと思います。
出庫数が月300件以下では、倉庫委託に対応してくれる業者はあまりありません。マスメリットが出せないので、依頼をしても断られることが多いのです。
受注の少ない事業のスタートアップでは、社内で在庫管理を行い、月300件を超えるくらいまで成長してきたら、外部の委託先を考えるという流れがオススメです。
倉庫を外部委託するメリット
外部倉庫に在庫管理業務を委託するメリットとはなんでしょうか?
・人的ミスの減少
1つめのメリットは「人的ミスの減少」です。
在庫管理の業務は手作業で行わなければいけないものが多く、どうしても入出庫漏れやピッキングミスなど、人によるミスが起きやすい業務です。
ピッキングにおけるミスを詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみて下さい。
ピッキングミスを防ぐことで業務を最適化!|在庫管理大学|在庫管理ソフト「ロジクラ」 (logikura.jp)
スタートアップの社内の在庫管理では、物流業務専任の人がいるわけでなく、他の業務を行いながら、注文が入った分だけ出荷業務を行うといったスタイルの会社も多いです。
物流業務に特化したプロに在庫管理を委託することで作業ミスを減らすことが出来るでしょう。
・社内のリソースの軽減
メリット2つめは「社内のリソースの軽減」です。
事業の初めは出荷件数も少なく、在庫管理に割く時間や労力はそこまで大きくないでしょう。
ところが注文が増え、出荷件数が増える頃には、新商品企画・新しい販路開拓・マーケティング業務・キャンペーン企画など、比例して他にもリソースを割かねばならない業務が増えてきます。
新しい人員を雇うのか?自社倉庫を作るのか?といった対策はなかなかのコストがかかりますが、在庫管理を外部に委託するという選択肢は、比較的低コストにリソースを軽減することができます。
・物流品質の改善・向上
メリット3つめは「物流品質の改善・向上」です。
事業規模が大きくなり出荷数が増えると、1つ1つの商品にかける業務を急いで行う必要が出てきて、丁寧に作業しているつもりでも梱包や住所チェックなどが煩雑になり、ミスが発生しやすくなります。
ECビジネスにおいて梱包・配送はお客様の信頼と直結する部分なので、気は抜けません。
物流業務に特化した外部倉庫に在庫管理を委託することで物流品質の改善と向上に効果的です。
物流倉庫の委託費用・料金体系
外部倉庫に物流業務を委託する際に気になるのがコスト面です。
扱う商品やサービスの内容によって値段は上下するので、一概にこれくらいとは明記しにくいのですが、物流倉庫の料金体系が一般的にどのようになっているのかを説明します。
固定費と変動費
物流倉庫の委託費用は主に大きく「固定費」と「変動費」の2つに分けられます。
「固定費」
梱包や出荷の量にかかわらず毎月支払うことになる基本料のようなものです。
主に下記のような内訳になります。
・在庫管理システム利用料
・業務管理料:倉庫での商品管理全般にかかる手数料のこと
・倉庫保管料:倉庫内の使用スペースに応じた家賃のようなもの
「変動費」
実際に「モノを動かす」際にかかる費用で出荷件数によって変動する費用のことです。
倉庫によって独自のサービスがある場合もありますが、主に下記のような内訳です。
・商品の仕分けや入庫、ピッキング、梱包それぞれの手数料
・梱包資材の料金
・配送料
料金体系は業者によって大きく異なる
物流会社によっては個別に料金を設定せず、パッケージ化したプランを用意しているところもあります。
一般に「固定費」は都心部よりも地方の方が割安になりやすいです。なぜなら土地の値段が安いからです。
しかし、地方にあることで配送料が多くかかることもあるので、安いからといって自社の配送先から遠すぎる場所を選ぶのは注意が必要です。
また「変動費」に関しては、業者によって本当に様々です。
冷凍冷蔵管理・ラッピングささげ・電化製品の動作確認など、その業者が扱う商材によってサービス内容も変わるためそれによって料金が大きく変わります。
物流倉庫サービスの選定をする前に「どこまでのサービスを外部に委託するのか」「コストはどれくらいかけられるのか」といった具体的な内容をしっかりと社内で検討する必要があるでしょう。
工場によって費用が違うのは承知の上で、具体的な費用相場が知りたいという方は、詳しく費用相場が載っているサイトを見つけたのでご紹介します。
参考サイト:物流倉庫の平均費用と料金相場|早見表つき【2021年保存版】
商品1個あたりどれくらいのコストがかかるか計算し比較するべし
物流倉庫の委託費用は業者によって大きく異なるので、
「じゃあどうやって比較すればいいの?」
と思われるかと思います。
商品1件あたりにいくら費用かかるのか、仮の設定で概算してみますので、参考程度にご覧ください。
<仮設定>
事業内容:アクセサリー雑貨EC事業
入出庫件数:月々平均800件程度(そのうち、ラッピング対応は月平均10件)
必要な倉庫の坪面積:5坪
委託を検討している倉庫の料金体系
項目 | 価格 | 備考 |
システム利用料 | ¥20,000(月額) | 固定費 |
業務管理料 | ¥10,000(月額) | 固定費 |
倉庫保管料 | ¥5,000(1坪あたり) | 固定費 |
入庫料 | ¥10(1個あたり) | 変動費 |
検品料 | ¥10(1個あたり) | 変動費 |
出荷料(ピッキング料) | ¥10(1個あたり) | 変動費 |
梱包料(段ボール) | ¥150(1個あたり) | 変動費 |
梱包料(ラッピング対応) | ¥100(1個あたり) | 変動費 |
配送料 | ¥300(1件あたり) | 変動費 |
上記の仮設定で月々の費用を概算すると、
ひと月の固定費は
システム利用料¥20,000+業務管理料¥10,000+倉庫保管料(¥5,000×5坪)=¥55,000
変動費は
(入庫料¥10+検品料¥10+出荷料¥10+梱包料(段ボール)¥150+配送料¥300)×800件=¥384,000
梱包料(ラッピング対応)¥100 × 月平均10件 = ¥1,000
ひと月の変動費=¥384,000+¥1,000=¥385,000
固定費¥55,000+変動費¥385,000=ひと月の費用総額 ¥440,000
一件あたりの出荷にかかる金額= ¥440,000 ÷ 800件 = ¥550
今、架空のアクセサリー販売会社で仮の条件で計算したところ1出荷あたりの費用が¥550であることが分かりました。
このように候補の委託倉庫の料金体系をもとに、1件あたりの単価を出しておくと比較しやすいと思います。
自社が委託倉庫にかけられるコストを1件あたりに概算し、比較してみると検討しやすくなるので、オススメです。
扱う商品の種類によって押さえておきたい注意点
委託倉庫を選ぶ際に扱う商材によって、適した倉庫を選ばなければいけません。温度帯や行える流通加工などをチェックして、自社で扱う商品を得意としている倉庫を選びましょう。
・食品の注意点
食品は最も繊細な管理を必要とする商材です。温度管理、賞味期限管理、衛生管理など、品質管理をしっかり行える倉庫を選ぶことが大事です。
また、ギフト需要の多い食品を扱っているなら、ラッピング、のし対応の流通加工が出来るところを選ぶべきでしょう。
また、酒類は酒類販売業免許が必要です。全ての倉庫が持っている免許ではないので、契約前にチェックしておきましょう。
・化粧品、香水の注意点
化粧品や香水系も倉庫管理に特殊な資格が必要です。
医薬部外品や化粧品は薬事法に基づいて管理しなくてはならない商材ですので、薬事法対応倉庫を探す必要があります。
・アパレルの注意点
洋服を畳んだり、タグ付けしたりといった作業は割とどこの倉庫でも行うことはできます。
しかし、ブランドイメージが大事なアパレル商品の取り扱いでは、畳み方、袋の入れ方、ラッピング、同梱物などの対応を丁寧に行える倉庫を探し、また自社ブランドのルールを徹底して伝える必要があります。
また、不良品を補修したり、アイロンがけを意味するプレス対応、まち針などの残留ミスを見逃さない金属探知検品などアパレル独自の対応が出来る倉庫はそう多くありません。
自社のアパレル商材にあった物流倉庫を探しましょう。
アパレルの在庫管理について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみて下さい。
・電化製品の注意点
振動や衝撃に弱い電化製品は、梱包や配送に細心の注意を払う必要があります。
また、顧客の要望に応じて組立加工、動作テスト、リペア業務が必要であり、熟練担当者でないと作業が行えないような専門性の高い在庫管理が必要になります。
機械・電化製品に特化した物流倉庫を選びましょう。
・家具の注意点
大型で重量のある商材なため、広い場所を必要とします。
またフォークリフトを使ってコンテナを降ろしたりと作業も大掛かりなため、設備が整った家具専門の倉庫を選ぶことが重要です。
配送組み立てサービスがある場合はそれに対応できる倉庫を探すか、または配送先に組み立て要員として自社の社員を派遣するなどの仕組みづくりをあらかじめ決めておくことが大事です。
物流倉庫を選ぶポイント
ポイント1:倉庫の立地をチェック
ECサイトで最も重視されるのは配送スピードです。倉庫の立地は配送スピードに直結します。
地方の方が一般的に地価が安いため、固定費を抑えられる傾向があります。
しかし、その場所によっては交通の便が悪く、天候や交通状況により、配送遅延が起きてしまう可能性も否めません。
立地の良さとコスト面のバランスを見てベストな立地にある倉庫を選びましょう。
ポイント2:在庫管理システムとの連携
自社で使っている在庫管理システムが倉庫と連携できるかは、あらかじめチェックが必要です。
また、在庫管理システムの会社では、同時に倉庫の紹介を行なっている会社も多くあります。
在庫管理システムを導入する際に自社の状況を相談して色々とシステムの仕様を決めているはずです。
自社をよく理解しているシステムの会社から紹介してもらい、倉庫を選ぶのも安心感があり、オススメです。
ポイント3:ECに特化した倉庫かどうか?
ECサイトでは倉庫から直接一般家庭の個人宛に商品を送る場合が多いです。
商品数や送り先の多さに慣れているBtoCへの出荷が得意な倉庫を選ぶ必要があります。
また、配送遅延は企業の信用に関わります。注文を受けてからスピード感のある対応ができるか?は重要なチェックポイントです。
ポイント4:サービス内容とコストのバランス
特殊な検品、ラッピング対応など出荷前に行う流通加工は自社の商材にあったものかどうか確認し、それにかかるコストが妥当であるかのチェックが必要です。
一般的に特殊なサービスの場合は割高であることが多いので、コストバランスを考えた上で倉庫を選びましょう。
ポイント5:配送・サービス品質
EC事業において配送のサービス品質は、お客様の信頼と直結します。
どんなに素敵な商品でも、ボロボロの状態で届いたり、配送遅延が起きてしまうと、一瞬でお客様からの信頼を失います。
その倉庫の配送スピード且つ丁寧な梱包を行なっているかなどをチェックすることが大事です。
自社にあった理想の委託倉庫を見つけよう
委託倉庫の検討のタイミング、メリット、コスト、選び方について説明してきましたが、自社にあった理想の倉庫を探すのは、大事であると同時に結構難しいことではあります。
最近は在庫管理システムを扱いつつ、委託倉庫も一緒に紹介してくれるサービスも増えています。
在庫管理システムを入れる際に自社の状況を説明しているはずなので、その会社から委託倉庫を紹介してもらうのも手っ取り早くオススメです。
在庫管理システム「ロジクラ」では、システムと一緒に委託倉庫も紹介する物流代行紹介サービスを行なっています。
他にも物流業務の委託をサポートしているサービスは様々あるので、自社に合う理想の倉庫探しに役立ててくださいね。